かなしいけどいつもこんなもんです










その人物が教室の引き戸を開けた途端、一瞬前まで賑やかだった教室の空気が凍り付いた。
あれ、俺零地点突破した覚えないんだけど。
廊下側から教室を覗いているのは、黒髪に黒い瞳、相変わらず肩に学ランをかけた天下の風紀委員長、雲雀恭弥その人だった。

「六道、いる」

雲雀さんは目の前にいた男子生徒の制服の乱れを注意してから(そいつ、金森は泣きそうになりながらシャツをズボンにねじ込んでいる)間違いなく俺にむかって問い掛けた。
うんまあそうだろう、群れが嫌いな雲雀さんと辛うじて交流のようなものがあるのはこの教室では俺くらいだ。

「お、おはようございます雲雀さん。骸は二年ですよ、あと今週は忙しいから来られるかわからないって言ってました」

中学の時の恐怖が刻まれているのか、多少どもりながら俺はなぜかわからないが一つ上の学年であるはずの六道骸について報告させられた(させられた、と感じるのは中学の時の恐怖が以下略)雲雀さんはおはようと律儀に挨拶を返してから「学校より大切な用事って何なの」と呟いた。
それだけ聞くとまるで優等生そのものだけれど、この人の場合は学校が大好きだから言っているだけだろう、授業に出ていないというかどの学年かすらわからないのだから。

「あ、えっとすみません」

反射で謝ると、雲雀さんは吊り気味の眼を更に吊り上げて俺を睨んだ。
所かまわず群れる人間達に制裁を加えていた中学時代に比べて随分丸くなったとはいえやっぱり怖い。むちゃくちゃ恐ろしい。

「何、また君関連なの」

俺関連、というのはボンゴレの仕事なのか訊かれているらしい。
正直言うとよくわからない。
骸はリボーン曰く「すげー使えるぞ」らしい。
確かに強くなったとはいえ俺は裏で動くとかそういうことにまったく慣れていないし、マフィアの世界を知っている獄寺君だってむらがある。
ランボは子供、他の守護者なんてほとんど一般人だ。
目の前の雲雀さんはボンゴレのために一切動く気はないから当然ながら論外だ。
対して骸は性格面で全てマイナスになっているとはいっても多方面に器用だし、裏世界に精通している。
しかも彼はいろいろあってボンゴレを裏切ることができないために「君の家庭教師やら父親やらにいいように使われているんですよ」らしい。
そんなことをさせるために助けだしたのではないと思った俺は何度も恐怖とか恐怖とか恐怖とかを押さえながら訴えてみたのだがとりあわれず、骸本人にも「君が大変な思いをするよりもいいです、無理難題ふっかけられても危険な仕事をさせられているわけでもありませんから」と説得されてしまった。
というより俺には無理難題も危険なこともさせるくせにこの扱いの差はなんだろう、あいつ案外骸のこと気に入ってんのか、てか俺骸に想われてんなってそうじゃなくて。

「いや、あのわかりません。そういうのあいつあんまり言わないから。新しい子拾ったとかなんとか言ってたからそれかも」

俺の言葉に雲雀さんは片方の眉を上げて笑った。
なんというか物凄く凶悪でやっぱり恐ろしい。
さっきから緊張しっぱなしで涙目のクラスメイトたちの精神が心配になったけれど敢えて頭から追い払う。俺だって命は惜しい。

「へえ、強いのかな」

やっぱりか。
むやみやたらに戦闘をしなくなったといっても雲雀さんは強い奴が大好きだから、そういう匂いを嗅ぎつけると相変わらず嬉しそうにする。
骸が拾ったと聞いたからうきうきせずにいられないのだろう。本当に理解できない。

「グイドは暗殺が得意みたいですからあなたが好きな種類の戦闘にはあまり向かないと思いますよ。というより僕に用事があるなら電話でもメールでもしてください。連絡先渡したでしょう」

雲雀さんの後ろからそんなに低いわけでもないのに高校生にしてはやけに落ち着いて柔らかな声が聞こえた。

「あ、骸おはよー」

「嫌だよ。例え事務連絡とはいえ僕の携帯に六道関連のものを入れるなんて。おぞましい、咬み殺すよ」

俺と雲雀さんが反応したのは同時で、雲雀さんが物騒なことを言っている間に骸はその横を擦り抜けて教室に入ってきて後ろのロッカーに背中を預けた。
俺の席は一番後ろの真ん中だからちょうど俺と雲雀さんの中間くらいだ。
何度も言うが俺は一年、骸は二年なので教室は別の所にある。
例え結構な割合で骸がここに入り浸っていて、俺のクラスメイトもその登場に慣れてしまっていたとしても。

「おはようございます綱吉、皆さんも。あと雲雀はもう少し礼儀というのを学んだほうがいいと思います、殺しますよ。おや、どうしたんですか。みたところ八割が涙目でそのうちの四割くらいが顔面蒼白ですね。」

最近気付いたのだがこの二人の間においてだけ相手を殺すという意味の言葉が挨拶として機能するらしい。
そんなに仲が良いと見られるのが嫌なのか。
逆に仲良しみたいじゃないのか。
教室を見回した骸はむかつくくらいきれいな顔を十人いたら十人見とれてしまう微笑みの形にした。
明らかに安堵したようなため息を吐く人も居たけれど、気付いて欲しいこいつは面白がっているだけなのだ。
だいたい雲雀さんと対等に渡り合えるというだけで味方なわけではないのだから、安心するのは間違っている。
間違っているのだが俺のクラスメイト(特に女子)はすっかり「やさしい笑顔で格好いい六道先輩」に骨抜きである。
こいつの本性を知ったら雲雀さんの方が何百倍もまともだということがわかると俺がいくら主張しても聞く耳持たれないだろう。

「骸、今日休みじゃなかったの?」

この空気を一刻も早く打破すべく俺は言った。
この際骸が拾ったと言った人物が暗殺が得意だとかそういう情報は丸無視した。

「ああ、グイド…今度新しく迎えた子の引っ越しとか保護者代理の手続きとかしなくちゃいけなかったんですがね、割と早く終わったので追い出されました。この時期生徒会は忙しいので助かりましたけど」

肩を竦める動作をして骸は軽く笑った。いちいち芝居がかった仕草が似合うやつだな。
そしてそうだ、ここのこいつは生徒会会長さまなのだ。
なんでそんなものになったのかと聞いたら「便利なんですよ。人の下に立つのは性に合いませんし」とかあっけらかんと答えられてげんなりした記憶がある。

「高校生が保護者代理ってそのグイドって子幾つだよ」

「十二、中学一年生です」

「はああああ!?」

「可愛いですよ。今度紹介しますね」

さっきより嬉しそうな笑顔で言う骸の横で雲雀さんがため息をついた。

「変態だとは思ってたけどまさかそこまでとはね。六道のこととかどうでもいいけど、用件を聞く気がないなら僕は帰るよ。」

「なんですか。わざわざ来たんですから大事なことでしょう。僕は雲雀恭弥の顔を一日に二度も見たいと思うほど酔狂ではありません。あと変態でもありません。グイドのことはちゃんと育てるつもりですし、欲情するのは綱吉にだけです」

相変わらず馬鹿丁寧に言って余計なことまで付け加えやがったこいつ。
ほらみんな聞こえただろう、こいつは暗殺得意な中学生拾ってきてしんとした教室で欲情なんていうおよそほとんどの高校生が普段使わない表現を俺みたいな男に使っちゃう変態なんだよ。
だめだ聞こえてない。
女子なんかうっとりして目をきらきらさせている。
霧の守護者は幻覚に加えて幻聴のスキルまで手に入れたのか。
いや、脳に直接作用する術とか使えるんだから関係ないのかもしれない。
それに俺にははっきり聞こえているのだからクラスメイトに聞こえないというのもおかしな話だ。
多分あれだろう、恋は盲目とかそんなやつだ。

「気持ち悪いな。飼い主ならちゃんとそいつの口と鼻をガムテープで塞いでおいてよ沢田」

「いくら骸でもそんなことしたら死んじゃいます雲雀さん」

「だから息の根を止めとけって言ったの。こんなのが僕の学校の生徒会長なんて未だに信じたくないよ。用件だけどね、文化祭が近くなると調子に乗って風紀を乱す草食動物の群れが増えるから取り締まりたくてたまらないんだけどいちいち咬み殺してたら準備に支障が出るだろ、だから対策会議やるよ変態生徒会長」

言葉少なな雲雀さんにしては珍しく一気にまくしたてて骸を睨む。
途中思わずつっこんでしまったのは長年の成果というかもう癖なので許してほしい。

「ああなるほど。下校時間とか活動制限とかペナルティについてですか。まあそのことについての話なら生徒会で進ませてはいますが合わせた方がいいでしょうね。てか人の呼称に妙な冠詞付けるの止めてください」

骸がそう言った所でがらりと前方の戸を開けて3限の現国教師が入ってきたが、教室の状態をみるなりクラスメイトと同じように固まってしまった。
心なしか震えているような気もする。
時計を見ると始業まであと1分足らず。
先生、俺は関係ないけどごめんなさい。

「僕は水曜か木曜の放課後一時間しか時間空けないからね。君が合わせなよ」

「まったく、それならもっと早く言いなさい。今日火曜ですよ。まあいい、明日にしましょう。それまでに生徒会案まとめておきますからちゃんと聞き入れてくださいね。あと僕が応接室に行きますからくれぐれも生徒会室に来ないでくださいよ。大事な役員に攻撃されたら僕だって黙っていられません」

特徴的なオッドアイの右側赤い方が細くなって穏やかだった笑みがまがまがしいものに変わる。
それを見た雲雀さんは予想通り嬉しそうに笑った。
怖い怖いこの二人が微笑みあっている図とかもしかしたら下手なホラーよりもよっぽど怖いかもしれない。
その証拠に始業チャイムが鳴ったというのに誰一人動こうとしない。
授業開始の声を掛けるはずの日直高橋さんは誰とも目を合わせないようにきっちり座って自分の膝とにらめっこしていた。
もちろん現国の先生も教科書をめくったりまた戻したりしてどうにかこの場をやり過ごそうとしている。
少なくとも骸は高校入学から今まで暴れたりとか以前みたいに生徒の歯を抜いたりなんて事はしていないはずだが、それでも今までの生徒会長にあるまじき統率力と権力を誇り、何より並盛最強というか最近はいろんな町に影響力を持つ(それこそ不良に絡まれたとき並盛高校の名前を出したら向こうが逃げ出したとかいう話をそこここで聞く)風紀委員長と対等に渡り合っているのである。
逆らってはいけない。
人間の本能というのは野生から離れたといっても結構優秀なものだと思う。
超直感なんて馬鹿らしい力に何度も助けられた俺が言うのだから間違いない。

「いいね。久しぶりに六道で遊ぶも悪くない」

「おやおや、僕がいつ君に遊ばれましたか。僕が君をぼろぼろにしたことなら記憶にあるのですが」

なんだか虎と巨大アナコンダが睨み合っている場面に遭遇したような気分だ。
少しでも動いたら、喉を喰いちぎられるか毒を飛ばされて動けなくなったところを絞め殺されるか。
正直どっちもごめんだ。

「ちょっと、骸、雲雀さん」

こういう空気に悲しいことに慣れてしまった俺はクラス代表として(ボンゴレ十代目としてだなんて絶対に言いたくない)二人を止めに入る。
例え途中で理解不能になって眠りに落ちることがわかっていてもこれ以上授業を妨害するのはまじめに学校に来ている人に対して失礼というものだ。
というのは建前でこの二人に暴れられて教室が壊されたりしてはかなわない。
さらに騒ぎを聞きつけて隣のクラスの獄寺君が出てきたりなんかしたら絶対に大惨事になってしまう。
それだけは避けたい。
何度も言っていることかもしれないが死んでも死にきれねえ。

「なんですか綱吉。ああ、そうだ明日君も来てくださいね、一緒に」

俺の言葉に反応した骸が微笑みながら振り向いてとんでもないことを言いやがった。
その笑顔からさっきの蛇が舌なめずりをするような雰囲気はすっかり消えてなくなっている。

「な、お前今の演技かこのやろう。みんな怖がるから止めろよ!ってか俺生徒会じゃないし、関係ないから行かないよ」

「嫌です。こんな悪い意味で永遠の戦闘狂少年やってるトリ男と一時間も二人きりだなんて。恋人がどうなってもいいんですか!」

「わがまま言うなよ生徒会長だろ。てか今お前が雲雀さんに言ったことに悪い意味以外ないからな、良い意味があったら教えてほしいぐらいだよ。もう授業始まったんだから教室帰れよ」

俺は面倒くさかったけれど椅子から立ち上がって骸を教室の外へ押し出そうとする。
高校生になって身長が多少伸びて筋肉も付き、長身とはいえ力技をあまり好まない骸ならいけると思ったのだが案外動かなかった。
見ればこいつは面白がって俺が力を加えている逆方向に体重かけてやがる。
力技は好まないが、力の使い方は誰より知っているやつだ。
何がクフフフフだこのやろう、手から炎でも出してやろうか。
グローブははめてないけど今ならできる気がするんだ。

「こいつに良い意味で何かを言われるくらいなら僕は草食動物の群れの中で一日過ごす方がましだね。じゃあ沢田が六道の死体を引きずってくるってことで」

雲雀さんは雲雀さんでさっきの飢えた捕食者そのものの表情からいつもの落ち着いた顔に戻ってさらりと言った。
どうやら骸と同じようにもとからここでやりあう気はなかったらしい。
よく考えたらいつぞや学校を傷つけられたときひどく怒っていた人が自らそれをやるとは思えない。
というか俺が付いていくのはいいの?群れてるんじゃないの?

「相変わらず察しが悪いですね。僕と二人でいるより連れ立っていても第三者が居た方がましと言っているんですよ」

「飼い主がいたほうが面倒がなくていいしね」

勝手に人の心を読まないで欲しい。

それに雲雀さんは人を猛獣使いか何かと勘違いしてるのだろうか。
こんなのを飼うくらいなら熊とかライオンの方がまだましに思える。

「邪魔したね。授業してもいいよ。それじゃ。」

最後は先生に向けてだろうか。あまりにも自然に偉そうにしてから雲雀さんは学ランを翻して行ってしまった。
  先生、お願いだからありがとう雲雀くんとか言わないでくださいどんだけ権力者なんだよあの人。
急に力を抜いた骸は、俺の手を引くと俺が押していた反動を利用して廊下に出た。
ついでに引き戸もぴしゃりと閉める。
勝手に何やってるんだと言おうとして転びそうになった俺をごく自然に支えると、雲雀さんが去っていった方を見やる。
風に翻る学ランを肩にかけた姿は廊下をきれいに直角に曲がって見えなくなった。

「僕たちもいい子になりましたよね。顔を見るたびに殺し合いをしていたあの頃が懐かしい。戦闘より楽しいことでも見つけてしまったんですかねえ」

腑に落ちないという感じで骸が言った。
何でお前ちょっと寂しそうなんだよ。
ふと腕時計を見るとチャイムが鳴ってまだ五分しか経っていなかった。
俺ものすごく疲れてんのに。
教室の中のことは、あまり考えないことにした。

「いや相変わらず群れ見たら咬み殺してるし、風紀を乱したとかいってこの前ボコボコにされてるやつ見たけど」

「それは知っています。生徒会から情報をリークしたりもしていますから。それにそれは戦闘というより委員会の活動でしょう」

んーと首をわざとらしく傾けた骸はクラスメイト達が聞いたらまた震え上がるようなことを平然と言った。
生徒会と風紀委員会というのは裏組織の別称か何かなのだろうか。
人を滅多打ちにすることが委員会活動なんてきいたこともない。
いや、まったく嬉しくないことに中学から聞きなれているのか。

「まあ僕としては雲雀みたいなタイプとは相性が悪いのであんまり戦いたくないからいいですけど。おや、綱吉は授業に戻らなくてもいいんですか。それとも僕と一緒にサボります?」

赤と青の両方の眼を細めて骸が笑う。
先ほどの営業用の笑顔ではなく、微笑みというには少し凶悪で艶めいて、愉しそうな顔。
時計はまだ午前を指しているのに、それは夜の雰囲気をまとっている。
俺にしか向けられないものだと知っているからこそ、なんだかお腹の辺りがむずむずして頭のほうに血が集まる。
ここは学校で、しかも廊下だし、背にした戸の向こうには沢山のクラスメイトがいる。
ああもう、高橋さんの号令が聞こえたのかどうかすらわからない。
俺が何も考えられなくなる方法を知っている目の前の外見だけはいい男が憎らしい。

「サボんない!お前も授業行けって。生徒会長サマは重役出勤でも大丈夫だろ」

誘惑(あれはまさしく、そうとしか言いようがない)を振り切るように顔を背けて言うと、骸はしょうがない、という風に息を吐いてわかりましたよと言った。
当たり前のことを言ったまでなのに俺のほうが我が侭だという扱いをされているのは納得いかない。

「あ、あとお前教室であんなこと言うなよ」

「あんなこと?」

「い、や、その。よくじょ、うとか恋人とか」

口に出すだけで恥ずかしい。
本当、よくこんなことを顔色ひとつ変えずに言えるものだ。
そういうところもつくづく常人とはかけ離れているというか常軌を逸しているというか。
一人で赤くなったり蒼くなったりしている俺の上からくふっ、と笑う声。
むっとして顔を上げると、オッドアイが思ったよりずっと近くにあって一瞬焦点が合わなかった。

「否定しないですよね。綱吉は。だから僕がつけあがるんです」

「そりゃ、否定すると本当っぽいだろ。みんな、冗談だと思ってんだから」

鼻が擦れ合うような距離で、なんかちょっとこれは見られたらやばいんじゃないだろうかとか思いながらあとずさると腰を捕まえられた。
大して暑い日でもないのにつうっ、と背中を汗が伝っていく。
廊下に面した教室の窓は一応磨りガラスになっている、だからといって俺たちの距離が近すぎるとか、骸がかがんでいるとかさすがにわかるのではないのだろうか。

「誰に知られたって構わないですよ。ぼくは、きみのことしか」

睦言のようなに囁かれて、その途中で唇に触れる湿った、やわらかくあたたかいもの。
一秒もない、ほんの短い間だけ合わさっていたそれは名残惜しそうにゆっくりと離れていった。
別に何度もされたわけでも口の中をかき回されたわけでもないのに、身体が震えた。

「そんな顔をして。仕様のないひと」

そんな顔ってどんな顔だよと思ったけど、なんとなく何を言われるかわかるような気がして俺を捕まえている骸の胸を押した。
意思はすぐに伝わって腰と肩に回されていた腕が解かれる。

「授業、ちゃんと行けよ」

「はいはい」

おざなりな返事をした骸はひとしきり肩を震わせてから俺の頭をなで、あっさり廊下を歩いていって雲雀さんと逆方向に曲がった。
窓から、渡り廊下を歩きながら手を振るパイナップル頭が見えた。
本当、恥も外聞もないとはこういうことをいうのかと最近授業で耳にした単語を使ってみる。
それは多分手を振り返した自分も同じだ。

教室に帰ると、そのまま骸に連行されるのかと思っていたらしく結構な人数が驚いたように振り向いた。
すみませんと謝るとなんだか教師のほうが申し訳なさそうにして席に座ってくれ沢田君とか言われる。

「あれ、大丈夫。具合悪いの」

掛けられた声になんでもないと答えて今は居ない人物をうらむ。
きっと今俺は頬とか首とかを赤くして妙な汗をかいているのだろう。
それは遅れて教室に入ることになった、そもそも並盛高校で逆らってはいけない二人を教室で鉢合わせさせてしまったことによる羞恥だとか焦りだと言い訳がしたかった。



20081025